目次
- 消費者の声をヒントに生まれた「生ジョッキ缶」の構想
- 缶ビールの常識を覆す“泡を出す”ための試行錯誤
- ビールを“楽しむ”という、新たな価値をつくりだした
- 生産体制を整え、さらに多くの人に届けたい
消費者の声をヒントに生まれた「生ジョッキ缶」の構想
幅広いラインアップで酒類を提供しているアサヒビール。その中でも、同社を代表する商品である「アサヒスーパードライ」は、1987年の発売以来、“さらりとした飲み口、キレ味さえる辛口の生ビール”をコンセプト に、“おいしさ”を求めた挑戦を積み重ねてきた。現在は50以上の国と地域で販売され、今なお多くの人に愛され続けている。
その「アサヒスーパードライ」ブランドの新商品として2021年に発売したのが、「アサヒスーパードライ 生ジョッキ缶」だ。
フルオープンできるふたを開けるときめ細かな泡が発生し、まるで居酒屋で飲む生ビールのように楽しむことができる同品。コロナ禍で外出するのが難しい時勢とも相まって発売前から話題となり、多くの消費者の心を捉えた。成熟し切ったように思われたビール業界に新たな風を吹かせた同品の開発の経緯について、中島氏は次のように語った。
「開発がスタートしたのは2017年頃。当時は自宅でゆっくりとお酒を楽しむ“家飲み”が広がりを見せていて、缶チューハイやハイボール、梅酒、クラフトビールなど、お酒の種類やカテゴリーも大幅に増えていた時期でした。そのため、新製品の芽を探そうとお客様へ調査やインタビューを行っても、『どのお酒も手頃な価格で手に入れることができるし、どれもおいしい』と言われることが多く、不満の声がほとんどありませんでした。
しかしその中で、『強いて言えば、居酒屋の生ビールが家で飲めたら最高だよね』という声があったんです。
これは以前から度々耳にしていた意見ではあったのですが、家飲みでのお酒の選択肢が広がり満足している状態だからこそ、これがお客様の本音なのではないかと感じました。そこから『生ジョッキ缶』の構想が生まれ、研究開発が始まりました」
さらに中島氏は、新ブランドではなく「アサヒスーパードライ」ブランドで挑戦することになった経緯について以下のように述べた。
「社内でかなり議論になりましたが、最終的には、私たちの代表ブランドであり、これまで数々の挑戦を続けてきた『アサヒスーパードライ』で、もっとお客様をワクワクさせようという結論に至ったのです」
